金粉漆繕い
いわゆる金継ぎは、割れてしまった陶片を漆で張り合わせ
金粉をまぶして装飾したものである。
代表的な作に江戸時代初期の芸術家 本阿弥 光悦の「雪峰」
があり、これは誠に修理という概念では考える事の出来ない、
美術芸術へ昇華した金繕いの技法と言える。
さらに古田織部は大井戸茶碗を十字に割り、裁断して
体積を減らした上で金繕いで再びつなぎ合わせた『十文字』
など、これなんぞは退屈な大井戸茶碗が見事に芸術の域へ
昇華させた、前衛的な芸術活動であったと、わたしは思う。
わざと傷をつけるというのは、前時代の千利休の精神とは
全く対極にあって、自然体としての不完全さを肯定する
侘茶の中心的な美意識ではなく、
意図的に不完全にするというところが芸術的で面白い。
しかし、どちらも本質は、不完全を愛でるということであって
今日の日本が目指す『完全』という事柄や物は、
まったくもって面白くはない。
茶道の世界ではひびが入ったり割れたものをくっつけたりした
お道具が珍重されることが往々にしてある、という文化を紡ぐ
日本という国は実に世界でも稀な美意識であり、日本人は
今一度美意識をせんたく致し候、というくらいの革命を起こし
美しい思想の社会を形成出来れば素敵だと思う。
PAOトラディショナル
この度は、京都府京田辺市にお住いのK様の元へお届けに
あがられたPAOトラディショナルをご覧頂きたい。
アイボリーに禅塗装して製作されたPAOトラディショナル。
誰が見ても、どう見てもアイボリーの車両である。
メーター左脇差しにはマグノリア時計を封入し、
純正風の塗装で仕上げが行われているところが小憎い演出。
フロントグリル周辺
バンパーのシルバー色、グリルのガンメタリック色が
PAO本来のカラーである。
写真にはないが、PAOのワイパーは左右非対称で、
右側のみフィンが装着されて少し大型となっていた。
この左右非対称が気に入らないから左側のワイパーを
右に装着する市井の人は、もっと不完全を
楽んでみては如何だろう。
コップ&缶受け
ドアレギュレーター、インナーハンドル、と一直線上から
少し下に設けられたコップ&缶受け。
この不完全さも、面白さのひとつであって、
完全ほど面白くもかゆくもないものはない。
PAO 内装一具
ダッシュパネル上下とシートの張替えはシックに決まり、
純正ハンドルが栄えている。
PAOちゃんと記念撮影
この度はK様、PAOトラディショナル納車
誠におめでとうございます。
エンジンから何から部品の交換を行ったPAO。
10年、20年と長くお乗り頂ければ幸いです。
今日はコレマデ。
本日の名言
何にても 道具扱ふたびごとに
取る手は軽く 置く手重かれ
by利休居士
奥の深い名言ですね。