大阪府和泉市のM様 PAOトラディショナル納車おめでとうございます

キューベルワーゲン考察

初代ミラジーノのようにミニを模して造られたものではなく、パオとは独創的なデザインの事である。というくらいの強い前提を基に話を進めて行きたい訳であるが、パオは市井に特にルノーキャトルに近いと思われている。昨年も東京のテレビ局の製作の依頼で、ビーチボーイズというドラマのイメージが欲しいということで、ルノーキャトルに代わりパオを貸出してほしいという問い合わせが入り、撮影現場まで持ち込んだものである。もちろん、パオには貿易風が吹き込んでおり、アクアグレイやオリーブグレイ、アイボリー等のボディカラーは、どことなく仏蘭西の気高き香りが漂っていると、わたしはそう言告げる。しかし、パオのボディーのリブ形状や凹凸のあるパーツ類は、今回の表題であるキューベルワーゲン(以下キューベル)のテイストとして、わたしのごつごつした肌に伝わってくるのである。さて、この写真にあるキューベルは、日本におおむね5台ほどしかない内の1台。1944年に製造された実物(近年はカナダのインターメカニカ社よりレプリカが製造されていた、実物車は12月よりスピードウェル所蔵)。第二次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーがフェルディナント・ポルシェに考案させた軍事車両であり、総生産台数は約52000台と、奇しくもパオとニアーである。それぞれ時代も違えば使用目的も異なる訳であるが、キューベルは大量生産を想定し、パネル類はことさらに互換性をもたせる為、平らな形状が特徴的である。それに対しパオは限定生産であり、美しい曲線を纏い優雅な印象である。また、キューベルは本物の軍事車両であるが、パオは冒険がテーマの気分なクルマ。このように全体的なデザインとしては真逆の方向性を感じるところであるが、ヘッドライトやテールレンズ、メーターなど丸型を基調とした設計は両者共にプリミティブであり、ボディー全体に連なるリブ形状など、少なからずもキューベルワーゲンのミリタリーというエッセンスをパオに感じるのである。

パオを製作
パオのフロントフェース

この度は大阪府和泉市にお住いのM様の元へ納車されましたPAOトラディショナルをご覧頂きたいと思います。アクアグレイのオートマチック、天井は俗にノーマルルーフと呼ばれるスチールルーフ。天上にもリブ形状があしらわれ、剛性に一役買っている。

パオの内装
パオのダッシュパネル

ダッシュパネル上面、アンダートレイとシートと合わせた配色で張替えが行われている。またダッシュパネル上面の装飾糸には、ボディーのカラーに合わせた縫糸で縫製を行い、一癖利かせている。このような細部に遊び心を持たせることが出来るのはSWならでは。

パオのシート張替え
純正風シート張替え

パオの純正風シートの張替えの模様。背面には古典的なステッチは入らず、純正のシートアレンジと言ったところ。本来は、ドンゴロス(コーヒー豆袋)をざっくり被せたというデザインである。最高位の素材を使用して製作されるSWのシート張替えは販売車両のすべてに着いており、サンプル生地を見て選ぶことが可能だ。

パオの内装
パオの内装シルバーパーツ

内張りに取り付けられる、シルバーパーツ群。これら一つひとつに、上質のウレタン塗料で再塗装を行い、製作が進められてゆく。細かなパーツを磨けば全体が光る。

スピードウェルが販売するドリンクホルダー
パオにドリンクホルダー

スピードウェルが考案するパオ、ラシーン用ドリンクホルダー。往年の形状である。

パオのホイールペイント
ホイールラッカーフィニッシュ

ホイールだけでなく、バンパーやフロントグリルなども上質なウレタン塗料でオーナーの思いのカラーに塗装が可能。もちろん追加費用は無い。

パオの後ろ姿
パオの後方姿見
パオを大阪府和泉市のお客様へ納車
パオと記念撮影

この度はM様、PAOトラディショナル納車おめでとうございます。これからは、PAOちゃんを相棒に楽しく生活して頂ければ幸いです。それでは、今後とも宜しくお願い申し上げます。

今日はコレマデ。

本日の名言

技術的問題を解決するためには美的観点からも納得のいくものでなければならない

byフェルディナント・ポルシェ

まさに、ポルシェが今なほ美しいのはこの言葉が起源なのでしょう。