
木の温もりを味わいたいなら、ウッドハンドルである。日本車によくあるフェイクなウッドではなく、本当の木星ハンドルは、運転する喜びさえ味あわせてくれる。モノの価値をどのようなスケールで計る事が出来るであろうか。この話をラシーンデザイナー平林俊一氏に質問したことがある。平林氏の回答は『それは熱量の違いだよ』であった。わたしはこの意見にすこぶる賛成である。前提条件は必要な物と前置きし、プラスチックの使い捨てコップと、陶芸家が登窯で焼いた器(コップ)は熱量は雲泥の差であって陶芸家が焼いた器(コップ)に軍配が上がる。これは明解なたとえ話であるわけである。用途は液体を溜めるという同じ目的であって、物質が持ったエネルギーで価値の基準を判断するという事は明解で面白い。今回のナルディクラシックウッドハンドルの製作に要するカロリーはハンドル全般の中ではハイカロリーであって、そのエネルギーがわたし達に伝わって良い物と判断しているのでもあろう。

この度は、兵庫県神戸市にお住いのY様の元へお届けにあがりました、PAOトラディショナルをご覧頂きたいと思います。ボディーはレストアを行い、内装までペイントをやり直し、純正風のシートの張替え。エンジン廻りはクーラーのコンプレッサーから交換されて、まさにハイカロリーな仕上げを行って製作されたパオ。

純正オプションのオーディオラックをリペアを施し、ナビゲーションを装填。こうした細かな配慮がスピードウェルの特徴である。昭和感満載のなかに新しい物を装填するのも、乙なもんですなぁ、乙なもんですよ、とは写真家木村伊兵衛の口癖。

純正風に例えたシートの張替え。純正は豆袋『ドンゴロス』をざっくり被せたイメージとパオデザイナー、古場田良郎氏より教わり、昨今は純正風の仕立ても行っている。ドンゴロスをそのまま敷くといたかゆいであろうから、それらに似た生地での張替えはパオには良く似合う。

この度はY様、PAOトラディショナル納車おめでとうございます。熱量を込めて製作差し上げましたので、長くお乗り頂ければ幸いです。それでは、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
今日はコレマデ。
本日の名言
「できること」が増えるより、
「楽しめること」が増えるのが、いい人生。
by斎藤茂太