四角と丸
自動車にはいろんな形はあるけれど、一般的な建築物はおおむね四角と丸という
形の集まりでモノが出来上がっているといってもなんら不具合はない。
特にこの昭和の香りがプンプンする家屋の外壁の補修ではアルミ板を適当に張り合わせるにも
大工さんは真四角に切ることだけで精一杯である。
だから建具などもみんな四角いデザインであり、
雨どいなどの丸いパイプなどが一味気化しているようにも見えてくる。
そんな完全な四角と丸の世界からラシーンを覗くとラシーンというクルマは
本当に四角でもなく丸でもない。
だが表現するなら四角みたいとか、どうだろうマルクは無いけれど、などなど
どこを取れば良いのかは解らないから、当時は実に新しく斬新なデザイン、
四角と丸で『まるくい』であったわけだ。
※当時の分からず屋の評論家達にはレトロと解釈されている。
このことは、後にあたしがデザイナー平林氏の取材の中で、ただ四角いだけでは
どうしても旧く見えてしまう。どうしたら新しい四角が表現できるか、
とその挑戦された時のお話を頂いている。
かの林檎の預言者、スティーブ ジョブズが造った最先端のアップル製品も実は
その四角を丸にして成功を収めたといっても過言ではなく、その遥か昔に
ラシーンというクルマが四角と丸に挑戦していた事がとてもうれしく思えた。
ラシーントラベラー 右舷前方姿見
本日は和歌山県新宮市にお住いのJ様の元へお届けに上がられた
ラシーントラベラーをご覧頂く事に致そう。
こちらのラシーンは走行こそ4万キロ台とラシーンの中では非常に少なく、
さらに内外装にスピードウェルの仕上げを施しとても綺麗に蘇った。
グリル中央のシルバーペイント。
ラシーンには純正の中で、フラッグシップモデル、タイプSに使用されている
グリル中央のペイント仕上げを彷彿とさせる、コスプレ仕様。
オリジナル(純正)であれば、バンパーと同色のシルバーの半艶で
仕上げられているのに対し、こちらはブライトシルバーでのシルバーペイント、
いわゆる『後塗り』を行い製作が進められた。
SWではラシーンのそのすべての販売車両のグリルのペイントが行われる。
そして、後期モデルをご購入になられた方には、この中央のペイントと
そのグリル中央のカラーの選択が可能だから個性を演出してほしい。
謹製ウェル帆布 60スタンダードレザー
オーナーの思いがギュッとつまっているレザーシートは、
オーナー自ら一つずつ色を決め、これだと思った色で
丹念に一脚ずつ張替えが行われるからである。
今回のその飴色のレザーと微妙に色を違えたパイピングからは
アンティークささえ漂う仕上げが施されている。
謹製ウェル帆布製作 タイヤカバー
タイヤカバーにも内装色と同じ飴色のレザーを防汚、防水加工を施し
新調されている。
さらに、そのカラーを支えのステーにもラッカーフィニッシュを施し
内外装の統一を推し進めているようだ。
ラシーンと昭和の長屋
平成の時代に入ると長屋などは町屋を除きほとんど建てられることはなくなった。
時代の移り変わりは激しく、それより車のデザインも移り変わりは激しい。
もちろん新しい、最先端のモノが好きな方も居れば、その真逆の
旧い物好きがいるわけであり、あたしなんかなその後者に当てはまる。
その旧い※1というものはなにかどこかしら温かみのある、
デジタルとアナログの違いのような感覚であろうか。
この長屋の玄関が左右に一つずつあり、どうやら
これはふたつのお家が一つになっていると推測するが、
これがラシーンのフロントドアとリヤドアにシンクロするのは
あたしの個人的な見方であって、しかし、これがフロントドア側の
お家がまだお住いでいらっしゃるが、リヤドア側に隣人はご不在であられる
といった、感覚はまさにラシーンの『4ドア2シーター』※2という言葉に見事に
当てはまったから面白い。
※1、旧いとは昭和から平成初頭にかけて未来に期待した工業製品のコト。
ただ旧いだけなものは好きではない。
※2、ラシーンは5人乗りであるが、5人乗車するのはその偶にであるから
割り切って4つのドアだけど2人乗り、という解釈から生まれた造語である。
この言葉もデザイナー平林氏の取材の中で頂いた面白い言葉の一つ。
ラシーンちゃんとJ様をガシャ!!
この度は、J様ラシーントラベラー納車まことにおめでとうございます。
本州最南端近くにある新宮はとても暑かったですが、
ラシーンと共に思い出をたくさん作って頂ければ幸いです。
今日はコレまで。
本日の名言
小さな事柄が人を悩ませる。
象が向かって来れば身をかわして逃げられもするが、
蠅からは身をかわすことができないだろう。
byジョシュア・ビリングズ
そうですなぁ、クヨクヨしているものはたいていそれぐらいの
小さな事柄かもしれません。