

駿府の弥次喜多
今から遡る事200年。入り鉄砲に出女と云わ江戸の幕府が関所を設けて人々を監視していた訳である。当然現在のようにふらっと旅に出る事など出来ず、県境をまたぐことは簡単な事ではなかった。しかし神社仏閣の参詣や温泉など治癒の旅は当時許されていたのである。そして今日のその時、駿府の弥次喜多である。弥次郎兵衛こと静岡市葵区出身のヤジサンと、喜多八こと同清水区出身のキタサンが江戸から東海道を巡る旅に出て、あちらこちらで問題を起こした十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』。これが出版されて、日本で旅ブームが巻き起こったのである。時を同じくして葛飾北斎は「冨嶽三十六景」を描き、東海道の道々から富士山が美しく見える景色、名所絵を残し、それがきっかけとなり、歌川広重が「東海道五十三次」を発行。東京の日本橋は確認していないが、京都の三条大橋脇にもヤジキタの銅像があった事を思いだしたわけで、こうやって繋がっている事に感動を覚える訳である。現在では弥次喜多と言うと、愉快な旅行の事を指すわけであって旅の原点が弥次喜多にあると言っても過言ではない。

この度は、静岡県静岡市にお住いのT様の元へお届けに上がりました、PAOトラディショナルMTをご覧頂きます。今回のパオは外装の良い物とエンジン機関が良い物とをハイブリッドで製作差し上げました特殊なモデルでございます。

リペアがほどこされたハンドル廻り。アイボリーのハンドルはひび割れしている物も多く、これからも使用に耐える物を選定。

ダッシュパネル上面とアンダートレイの張替と、エアコンの吹き出し口のリペアパーツの交換。シートの一部に合わせたカラーにてレザー張りを行う事によりシートと内装の調和が生まれる。また、エアコンの吹き出し口は特に目に着く所であり、ルーバーの割れや膨らみのある物はSW謹製リペアパーツと交換を行う。

純正のデザインを踏襲して張替えが行われたシート。今回はダッシュ上面、アンダートレイとシートのパイピングをあわて張替えを行った。運転席はアンコを増量して乗り心地を良くしている。

トノカバーの取付。荷室の目隠しにも使用される。フレームは純正以上の仕上がりにボディーと同じ塗料にて塗装を行い、オーナーの選定した生地を元に張替えを行う。

荷室部のカバーも新調。パオオーナーの方ならなるほどと思う訳であるが、荷室部のゴムマットが縮んで汚れて、カチカチになって、みすぼらしい訳であるが、そこは新調して見えないところも美しく。

内張りも全面リペアを施し、さらに準外板までピカピカに仕上げる。

今回はジャーマン生地による張替えを行い、10年いや20年と使用に耐えることであろう。

この度はT様、PAOトラディショナルMT納車、誠におめでとうございました。長らくお待たせ致しました。また、沢山のお土産まで頂きこの場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。新天地でパオライフをお楽しみ下さいませ。
今日はコレマデ。
本日の名言
『東海道中膝栗毛』(とうかいどうちゅうひざくりげ)
1802年(享和2年)から1814年(文化11年)にかけて初刷りされた、十返舎一九の滑稽本である。
「栗毛」は栗色の馬。「膝栗毛」とは、自分の膝を馬の代わりに使う徒歩旅行の意である。